どうも、先日BS 12(トゥエルブ)にて放送されていた劇場版『銀河鉄道999』を久しぶりに観て、改めて(ストーリーの)テンポの良さに魅了されたSATAトミオです
いや〜ホント良いですね『銀河鉄道999』
なんと言ってもゴダイゴが歌うエンディング曲「銀河鉄道999」に最後はグッときます
BS放送の「BS12(トゥエルブ)」というチャンネルでは、新作・旧作・隠れた名作まで毎週日曜よる7時に放送する『日曜アニメ劇場』という番組があります
そして、その『日曜アニメ劇場』枠で2月28日(日) に、ガイナックス衝撃のデビュー作!『王立宇宙軍オネアミスの翼(1987)』が放送されます!!
イェーーーイ!!パチパチ👏
『オネアミスの翼』ですよ、奥さん!
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(以後、『王立宇宙軍』)とは、『トップをねらえ!(1988)』や『新世紀エヴァンゲリオン(1995)』などで知られるアニメ制作会社「GAINAX(ガイナックス)」のデビュー作であり、1987年に公開されたアニメ映画
企画に岡田斗司夫さん、監督・原案・脚本に山賀博之さん、キャラクターデザインに貞本義行さん、作画監督(スペシャルエフェクトアーチスト)に庵野秀明さんといった当時20代だったオタク第1世代のクリエイターたちがメインスタッフとなり、若き才能で新たな映像に挑戦した作品です
さらに音楽監督には「戦場のメリークリスマス」で知られる坂本龍一さんや主人公シロツグ・ラーダットの声優に森本レオさんを起用し、話題性を集めます
『王立宇宙軍』といえば、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』でも監督される庵野秀明さんがアニメーターとして参加されているというところです
実は以前更新した、【庵野 秀明ヒストリー】20代の頃の庵野監督を調べてみたら凄すぎた🚀という記事を書く為に、80年代に庵野さんが関わられた様々な作品について調べました
知っていた出来事でも深く調べてみることで改めて気付かされる庵野さんの凄さがあったような気がします
そんな中でも知らないことも多くあり、アニメーター・庵野秀明にとって欠かせられない『王立宇宙軍オネアミスの翼』が未視聴だったので観たところ…いやはや、とんでもない作品を観たという感じでした!
今まで観たきたアニメとは一味も二味も違う感じがあり、本作にしか感じれない唯一無二の凄さがあったように思えます
近々BSでも放送されるということなので、今回はそんな本作の魅力を書いていきます
あらすじーー
"戦わない軍隊"として政府や世間から不要な存在としてバカにされている「王立宇宙軍」に所属するシロツグ・ラーダット(cv.森本レオ)は、仲間たちと自堕落な生活を過ごしていました
この日も夜の歓楽街で遊んでいた宇宙軍の仲間とシロツグ…仲間たちが各々に遊ぶなかシロツグは広場でビラを配り信仰活動をしていた少女と出会いビラを受け取るのです
翌日、淡い下心を胸に書かれていた住所に向かったシロツグ…住所に書かれていた民家を訪ねるとビラ配りをしていた少女リイクニ・ノンデライコ(cv.弥生みつき)に迎えられます
リイクニからの熱い眼差しを受け舞い上がったシロツグは、誰もが嫌がる人類初の有人宇宙飛行計画のパイロットに志願するのです
始めはリイクニへの期待に応える為、不純な動機から志願した宇宙パイロットでしたが次第に思いは変わっていき、シロツグと宇宙軍の仲間たちは人類初の有人宇宙飛行計画の成功を目指します
本作は、ハラハラドキドキといった刺激の強い作品が好きな方からすると〔何が面白いの?〕というぐらい評価が分かれる作品であります
主人公シロツグが宇宙パイロットに志願し、人類初の有人宇宙飛行計画の成功を目指す過程を淡々と描き、ストーリー的に〔コレだ!〕といえる見せ場があるわけでもありません…
そういう意味では"つまらない作品"なのかと考えてしまいます
しかし!そうではありません!
心の中で芽生えた小さな感情の一つ一つが、なんて事ないシーンの積み重ねでフツフツと大きくなっていき、その溜まり溜まったフラストレーションは最後の打ち上げシーンで大爆発する爽快感と言ったら、他に比べようがないぐらい凄いです!
凄いのです!!
そこには、【スタッフ平均年齢:20代半ば】の若きクリエイターたちの熱意が凝縮されています!
ガイナックスの母体、伝説のアマチュア集団「DAICON FILM」
まず『王立宇宙軍』の魅力を語る前に、作品が制作された経緯について語りましょう
80年代というのは、『ヤマト』『ガンダム』ブームなどでアニメ業界が盛り上がっていった時代でありました
その盛り上がりは、とあるアマチュアアニメ制作集団が登場することにより更に加熱していきます
それが「DAICON FILM」です
「DAICON FILM」は、岡田さんや山賀さんや庵野さんらが大学生の頃に参加していた自主制作映像チームであり、大阪で開催されたSF大会「DAICON Ⅲ&Ⅳ」のオープニングアニメを手掛けアマチュアながら凄すぎるクオリティにプロから一目をおかれるほどの注目を集めます
「DAICON Ⅲ&Ⅳ」の成功をきっかけに1984年頃に『王立宇宙軍』の企画に着手し、本作を制作する為に「DAICON FILM」メンバーで設立したアニメ制作会社が「ガイナックス」であります
これが『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の始まりです
そこから『王立宇宙軍』というタイトルでパイロットフィルムが制作され全国各地で上映されたのちに、公開前年の1986年に『王立宇宙軍 リイクニの翼』というタイトルで制作発表されます
その後、タイトルを『王立宇宙軍 オネアミスの翼』と変え本作は公開されたのでした
宇宙に行きたいとは思っていない主人公
『王立宇宙軍』という作品は、不純な動機から人類初の有人宇宙飛行計画のパイロットを目指すことになるシロツグに焦点をあてた作品であり、宇宙パイロットを目指す過程で変化するシロツグの微妙な感情の変化が魅力の作品であります
そんな主人公シロツグ・ラーダットの魅力について語りましょう
シロツグ・ラーダット(cv.森本レオ)
子どもの頃に水軍のパイロットに憧れ所属することを夢見るものの、学校の成績不振により断念し、"戦わない軍隊"とバカにされている「王立宇宙軍」に所属することになります
誰からも期待されないことにより自堕落な生活を送るものの、リイクニと出会うことで人類初の有人宇宙飛行計画のパイロットに志願し宇宙を目指すのです
志願した当初のシロツグは、ぶっちゃけ宇宙に行きたいとは思っていないわけです
リイクニへの淡い恋心を実らせる為だけに利用し、少しでも気を惹きたいと考えるシロツグの思惑が溢れています
しかし、宇宙パイロットになる為に様々なトレーニングを受け、打ち上げるシャトルを製造するスタッフやサポートする宇宙軍の同僚らに感化されていき、自分のため…仲間たちのために本気で有人宇宙飛行計画する為に努力するのです
そこがカッコいい!
さらに、人類初の有人宇宙飛行計画のパイロットを目指すシロツグを政府が国民的英雄に祭り上げ、国のPRに使うことで周辺諸国から暗殺命令が出されて狙われる展開に発展…そこで葛藤するシロツグの感情にも注目してください!
主人公シロツグの声優を担当されているのは、俳優・ナレーターなどで有名な森本レオさんです
森本レオさんといえば「きかんしゃトーマス」(第1期〜第8期)でナレーションされており、落ち着いたトーンで語られる声が印象的な方だと思います
本作でもその声は健在で、森本レオさん演じるシロツグは淡々と落ち着いて喋るキャラクターであり、あまりの落ち着きっぷりなので、初見で聴いた時は〔これが主人公なのか…〕と驚きました
しかし、作品が進むごとに声とキャラクターがドンドンとシンクロしていき、見終わる頃には森本レオさん以外シロツグの声はありえない!と思えます
是非、森本レオさん演じるシロツグにも注目してください!
シンプルすぎるモノローグ&オープニング
本作が他の作品と一味も二味も違うのは、物語の導入であるモノローグ&オープニングを見ていただければ分かると思います
ジェット機の離陸シーンに主人公シロツグのナレーションが入り、自分の夢について語るのです
いいことなのか、それとも、悪いことなのか、わからない…
でも、多くの人間がそうであるように、俺もまた自分の生まれた国で育った
そして、ごく普通の中流家庭に、生まれつくことができた
だから、貴族の不幸も、貧乏人の苦労も知らない
別に、知りたいとも思わない
子どものころは、水軍のパイロットになりたかった
ジェットに乗るには、水軍に入るしかないからだ
早く、高く、空を飛ぶことは、何よりも素晴らしく美しい
でも、学校を卒業する2ヶ月前、そんなものにはなれないってことを成績表が教えてくれた
だから、宇宙軍に入った……
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』モノローグより
ナレーションの通り、『王立宇宙軍』(シロツグ)の物語は挫折からスタートします
アニメ映画の始まり方としては実にシンプル過ぎる展開…
しかし、こういった経験って誰もが持っていると思いますし、シロツグが背伸びしていない等身大のキャラクターであることが掴めるシーンで好きなんですよね
そんな挫折スタートから流れるのが、坂本龍一さんのオープニングテーマ
コーラスなどはなく淡々と流れる音楽に民族的な静画がスライドショー形式で流れる…オープニングも実にシンプルなんです(このオープニングテーマ曲がまた良い)
実にシンプルだからこそ奥ゆかしさが溢れ、そこが『王立宇宙軍』の魅力ではないかと思っています
熱意とこだわりが詰まった、独自のデザイン
『王立宇宙軍』という作品はメインスタッフの大半が当時20代と若い力で作られた作品です
そして、その若さは作品の中に登場する機材や小道具などの設定デザインにも現れており、既存の作品にない独自のデザインで作り上げた世界観になっています
『王立宇宙軍』だけで使われる異世界文字に始まり、ネジを締める工具に至るまで細部にまで拘り抜いています
中には独自のデザインに拘りすぎて多少無理もあるデザインもありますが、新たな映像作りに挑戦している熱意は伝わりそこも『王立宇宙軍』の魅力です
ここで『王立宇宙軍』に登場する独自のデザインの小道具を紹介します
出港式
豪華客船みたいな船が出港する時に紙テープを投げて見送るような風習がありますが、『王立宇宙軍』では乗客が木の板を叩いて音を鳴らす風習があるような描写があります
本
『王立宇宙軍』に登場する本は独特で、様々な形をしております
まずは私たちの世界でも一般的な両手に広げるタイプの本…しかし本の隅が切り落とされており、台形のような形になっています
次にシロツグが読む本(聖典)…縦長に持って読み進めていくタイプとして描かれているのです
貨幣
『王立宇宙軍』の独自のデザインの中で一番有名なのが貨幣ではないでしょうか
私たちが暮らす世界では硬貨(コイン)や紙幣をお金として扱っていますが、『王立宇宙軍』では棒状の金属品をお金として扱っております
例えるなら、麻雀の点棒のようなものです
種類も金・銀・銅など複数あり、それぞれに長さや重さが異なる作りになっており貨幣としての価値の違いが表現されています
異世界文字
異世界文字自体は、他の作品でも独自のデザインを設定されてることはよくあることですが、『王立宇宙軍』のこだわりはハンパないです
数字はもちろん、毛筆文字・活字・デジタル文字をそれぞれに設定し、さらには活字の元になった象形文字まで設定しており、完璧な異世界文字を作り上げております
はっきり言って異常です
その他にもテレビ・バイク・インターホンなど、独自のデザインをした小道具がたくさん散りばめられています
こういったデザインがごく自然に登場しますので、画面の隅々にまで目を凝らして観ていただきたいです
"セル画最高峰"の打ち上げシーン
『王立宇宙軍』といえば、作画のクオリティが異常に高い作品として知られています
その作画クオリティを支えているのが『エヴァ』シリーズの監督として知られている庵野秀明さんです
本作で庵野さんは作画監督と【スペシャルエフェクトアーティスト】という肩書きでクレジットされており、クライマックスシーンの爆破エフェクトなど担当されております
その中でも代表的なのが、シャトルの打ち上げシーンです
シャトル打ち上げ時に発生する氷片一つ一つに番号をつけ手描きで作画され、そして氷片の動きすべてに異なる変化をつけて作画されている為に、膨大な時間とコストをかけて描かれています
これらは全てCGでなくセル画で表現されているというのが驚きです
是非、クライマックスシーンの手描き作画にも注目してください!
若い力で挑んだ、シロツグらと制作スタッフ
『王立宇宙軍』という作品は、主人公シロツグと宇宙軍の同僚たちが若い力で人類初の有人宇宙飛行計画の成功に挑んだ作品です
そして本作もまた、監督の山賀さんを始め平均年齢20代半ばの制作スタッフが若い力で新たな映像表現に挑んだ作品であります
つまり、シロツグらと制作するスタッフの年齢はリンクして観ることができ、若い力でしか描くことができない熱意やこだわりが『王立宇宙軍』の世界(映像)には存在するのです
だからこそ、本作は若い方に刺激を与える作品であり、多くの若者に観ていただきたく思います
20代だった山賀監督や庵野さんらが、若き日の青春を全てぶつけ徹底的にこだわりぬいて作り上げた本作はきっと今を生きる為のヒントがあるはずです
是非ご覧ください!