良いですよね、角川映画!
というのも先日、Amazonプライム・ビデオ内にある「シネマコレクション by KADOKAWA」という有料チャンネルに登録して80年代の角川映画を見始めたからです
「探偵物語」や「時をかける少女」など、80年代の角川映画は、80年代当時の日本が濃縮された作品ばかりで観ているだけであの時代に想いを馳せることができる様な気がします
もうねぇ、めちゃくちゃエモいのです!
80年代カルチャー好きとってあの時代というのは特別であり、80年代の日本を感じれる角川映画は平成生まれの自分にとってもすごく貴重に感じます
プライム・ビデオ: Prime Video:シネマコレクション by KADOKAWA
角川映画といえば、アニメ作品もたくさんあり、第1作目の『幻魔大戦(1983)』を始め、『少年ケニヤ(1984)』『カムイの剣(1985)』『時の旅人(1986)』など、どれも普通のアニメ映画にはない演出方法を取り入れた意欲作ばかりです
そんな中、今回は夏にピッタリな80年代角川アニメ映画を紹介します
それは『ボビーに首ったけ』です!
『ボビーに首ったけ』とは、原作・片岡義男の小説をアニメ映画化し、1985年に角川春樹事務所・制作により公開された作品(同時上映は『カムイの剣』)
周りの友達や妹から「ボビー」と呼ばれる高校生・野村昭彦のひと夏の青春を描いた作品です
本作は『カムイの剣』と同時上映で公開された作品である為に「上映時間・44分」と映画としては短いですが、その中にボビーの青春が濃縮されており上映時間以上に見応えがあります
まず「突然って、きらいですか・・・?」というキャッチコピーにエモさを感じられずにはいられません!
本作のキャラクターデザインには漫画家・吉田秋生さんが担当されており、代表作として2018年にアニメ化され話題となった『BANANA FISH』(バナナフィッシュ)があります
吉田さんがデザインしたボビーがすごく良く、80年代らしさ溢れるキャラクター性が素晴らしいです
そして本作の監督をされている平田敏夫さんは独創的な演出を数多くされている方で、80年代には『ユニコ(1981)』『グリム童話 金の鳥(1987)』『はれときどきぶた(1988)』など児童向けの作品も手掛けられています
80年代に活躍された名のある監督陣に比べればあまり知られていない方かもしれませんが、個人的にはめちゃくちゃ好きな監督の1人です
今回は、そんな『ボビーに首ったけ』の魅力について語っていきます
あらすじーー
高校3年生の夏、バイクが好きな高校生・野村昭彦(ボビー)のもとに一通の手紙が届く
それをきっかけに差出人の女の子と文通し始めたボビーは、夏休み前からアルバイトを始め学校を無断欠席して夢中で働くのでした
しかし、無断で学校を休んでいることが父親にバレてしまい衝突したボビーは、ついに家を出てしまう…
本作には80年代当時の日本がそのままアニメに落とし込まれており、そこでバイク・文通・アルバイトと青春を謳歌する中で将来への期待と不安に葛藤するボビーの心情が見事に描かれています
まずは本作の主人公であるボビーの魅力について書いていきましょう
芸能人の声優起用が好きになったボビー役の演技力
ボビー(本名:野村昭彦)/cv 野村宏伸
バイクが好きな高校3年生(17歳)
バイク旅の体験談を雑誌に投稿したところ見事に掲載され、それをきっかけに岡山に住む同い年の女性・中原咲美と文通するようになる
バイク旅など好きなことをしている分学校の成績は悪く、高校卒業後は就職を考えているボビーだが、大学に行ってほしい父親と進路について揉めている
[親に縛られたくない、自分がしたいことで自由に生きていく]という、あの当時…80年代の若者が描いていた若者像がそのまま投影されているかの様なキャラクターに感じます
そんなボビーの魅力といえば、やはり声を当てられている当時アイドル的人気があった野村宏伸さんの存在です
野村宏伸さんは、1984年公開の角川映画『メイン・テーマ』のオーディションに参加され優勝したことをきっかけに俳優デビューし、その年に日本アカデミー賞新人賞を受賞されるなど輝かしい成績を持って本作に出演されます
そんなボビー役の野村さんの声の演技というのは、声に勢いがなくお世辞にも上手いとは言えない…いや、下手です
初めてボビーの声を聞いた時に、雷に打たれたような衝撃が襲いかかり、衝撃のあまり〔わー…〕と小さな声が漏れたのを憶えています
それぐらいの言葉に言い表せない演技でした
このように、声優でない方が起用される事で微妙な雰囲気になるのは、アニメファンの間でも長年の課題とされてきています
昨今でも、アニメ映画の主演に俳優が起用された際に〔声が合ってない〕だの、〔下手くそ〕だの、と不満の声が一部から出ているようですが、そういう人たちは『ボビーに首ったけ』を観た上で語っているのか…ボビーの演技はこんなもんじゃないぞ!と問いたい
ボビーの演技を観ているとそれ以外の全部、可愛らしくて仕方ありません
よって、どんなに下手でもボビーの声を受け入れることができたら大概の声の演技は呑み込めます
私は『ボビーに首ったけ』という作品との出会いをきっかけに、それ以降ボーダーラインならぬ、【ボービーライン】という声の基準を設定するようになりました
野村さんの演技を基準としていれば、どんな演技に対しても寛容的な心で観ることができます
ここまで色々と書いてきましたが、私は決して野村さんの演技を酷評しているわけではありません
むしろ自分はボビーの声は、大大大ダーーーイ好きです!!
(ここまでの無礼、誠にすいませんでした…)
見始めた序盤の頃は声に違和感を感じながら観るわけですが、ボビーの声の中に[未熟さの中で何かを掴もうとする少年の心がある]と見終わる頃に初めて気付かされます
【ボビー=野村宏伸】に見える瞬間が訪れるのです
それはプロの声優には決して出せるものではなく、野村さんにしか出せないものではないかと感じています
そういった所に、声優でない方を起用する意味があるワケです
是非、魅力たっぷりなボビーと野村さんの演技に注目して観ていただきたく思います
手紙には人の心がある
『ボビーに首ったけ』という作品は、80年代の日本がリアルに描かれている作品です
その一つとして【文通】が登場し、作品に大きく関わってきます
文通というのは、手紙でやりとりをするコミニケーションツールであり、返事を書いても届いて返ってくるのに何日もの時間がかかります
SNSツールで素早く簡単にやりとりができる現代からしたら古典的過ぎるツールです
本作では、ボビーと岡山に住む中原咲美が遠距離の文通をするわけですが、ボビーの文通相手の中原咲美…めちゃくちゃ文才です!
手紙を受け取った時の天気や心境を一人語りのように書かれており、巧みな言葉を繋ぎ合わせてあります
それに対して、ボビーが一言二言しか返さないので、よりその巧みさが伝わってくるのです
しかし、この一人語りが妙に心地よく〔当時の人ってこんな風に誰かを思いながら一語一句書いていたのかな〕と考えさせられます
だからこそ、文通の素晴らしさがあるのです
相手のことを考えながら筆を走らせて文を書くからこそ、一つ一つの言葉に想いがこもるのかもしれません
そんな文通の素晴らしさが詰まった二人のやりとりを観ていただきたく思います
バイクで駆け抜けたラスト
本作といえば、やっぱりバイクシーンが目立つ作品であります
日本各地を巡るバイク旅、バイクが飾れている店でアルバイトをする…ボビーの心に火を灯すのはいつだってバイクです
特に終盤では、バイクで疾走するボビーの姿が、声をあてられている野村宏伸さんが歌う挿入歌と共に描かれています
セリフなんか一切ありません!
エンジンが震える音とタイヤのグリップ音の中に、ただ野村さんの歌声が添えられている不思議な世界観が4,5分間続きます(体感だと、もっと!)
しかし、そのシーンこそが本作の肝であり、ここにボビーの心情と青春の全てが詰まっていると言ってもいいでしょう
まだ何者でもない少年が色んな経験を積み、大人になっていく過程が一夏の思い出と共に描かれているわけです
そして少年が何かを掴みそうになったところでこの作品はエンディングを迎えるわけですが、結末はご自身の目で確かめてほしく思います
これだけは観た人だけにしかわからない感情があると思いますので、どうかボビーの青春を見届けてください
ボビーの生き方から学ぶ、若者へのメッセージ
本作は80年代に公開された作品でありますので、価値観など今の時代には受け入れがたい内容も多々あるかもしれません
しかし、ボビーの考えや境遇なんかは共感できる部分もあり、悩める時代を生きる若者の助け舟になるのではないかと思っています
バイク好きの高校生が父親への反発から家出し、ひと夏の青春をアルバイトに恋にバイクへと情熱を燃やす…
実に80年代の日本映画らしく、個人的には『ボビーに首ったけ』を角川アニメ映画の中でベスト1に挙げたいです
それぐらい心を衝撃を与えた作品であり、心に残り続けています
是非、悩み苦しんでいる若い世代に本作を観ていただきたく思います!
ここまで『ボビーに首ったけ』について熱く紹介してきましたが…この作品……
配信サービスで観れません!
ってか、DVD化すらしておりません!!
紹介しておいて何だそれっ!て感じですけど、ホントに素晴らしい作品なので機会があれば是非観てください(配信とか放送されることがあれば、すぐ告知します!)
動画配信サービスでの配信、何卒よろしくお願いします
(※過去にVHSやLDで発売されていますので気になる方は探してみてください)
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