どうも、プロ野球が開幕して野球熱が高まってきているSATAトミオです
いや〜やっぱり良いですね、プロ野球!
なんと言っても2021年シーズン今年は、怪物ルーキーの阪神・佐藤輝明選手やメジャーリーグから帰ってきた楽天・田中将大選手など見ごろがたくさんあり、見ていてワクワクしますね
私の中で野球熱が上がってきている今、野球に関する80年代アニメのブログ記事について今回は書いていきましょう
80年代野球アニメで思い浮かべる事といえば…やはり『タッチ』であり、その作者・あだち充先生だと感じます
80年代にアニメ化されたあだち充作品は、
・キティフィルム制作の『みゆき(1983)』
・グループ・タック制作の『ナイン(1983)』『タッチ(1985)』『陽あたり良好!(1987)』
この4作品であります
その中でもグループ・タック制作の3作品は【80年代・あだち充野球アニメ3部作】と称されることもあったり、なかったり…します(むしろ、この呼び方を定着させたい!)
というわけで今回は、グループ・タック制作の『ナイン』『タッチ』『陽あたり良好!』…この3作品の関連性について語っていきます
まずは【80年代・あだち充野球アニメ3部作】と呼ぶ経緯について書きましょう
80年代・あだち充野球アニメ3部作とは、『ナイン(1983)』『タッチ(1985)』『陽あたり良好!(1987)』の3作品からなるグループ・タック制作の野球アニメです
3作品とも【原作・あだち充 × 総監督・杉井ギサブロー × アニメーター(作画監督)・前田実 × 音楽・芹澤廣明】のコンビにより制作された作品である為に、【80年代・あだち充野球アニメ3部作】と呼ばれることが相応しいと勝手に思っています
この3作品は同じコンビにより制作されていることもあり、作品自体にも共通点が多いです
そして【80年代・あだち充野球アニメ3部作】で築き上げられたスタイルは、『タッチ』『陽あたり良好!』でシリーズ監督したときたひろこ監督へと受け継がれ、自身の監督作品『YAWARA!(1989)』の大ヒットに繋がります
このようにアニメの歴史を紐解く上でも重要な【80年代・あだち充野球アニメ3部作】の魅力を語っていきます
まずは3作品の作品紹介と見どころなどについて書いていきます
ナイン
「週刊少年サンデー増刊号」で1978年から1980年まで連載されていた野球漫画
アニメは1983年5月に日生ファミリースペシャル枠で『ナイン1』が放送され、その後『ナイン2 恋人宣言(1983年12月)』、『ナイン 完結編(1984年5月)』が放送されます
さらに『ナイン1』は1983年9月に劇場公開もされており、現在配信サービスで観れるのは劇場公開版(オリジナル版)です
【あだち充野球アニメ3部作】の中で初めにアニメ化された作品であり、テレビスペシャル(全3話)で放送され話数も少ないという点からも「あだち充入門作品」としてオススメできる作品であります
あらすじーー
運動のできない優等生ばかりが集まる進学校・青秀高校に入学した中学陸上短距離記録保持者ほどの俊足・新見克也(cv.古谷徹)、中学柔道県大会個人優勝者ほどの怪力・唐沢進(cv.富山敬) の野球経験なしの2人は、球場で見かけた美女・中尾百合の悲しい顔を見たくないと野球部入りを決意する。
そこに全国中学野球優勝投手のサウスポー(左投げ)・倉橋永二(cv.塩沢兼人)が加わり、甲子園出場を目指す。
克也と百合の恋…そこに現れる百合の一つ上の幼馴染でライバル校・武南高校のエース山中健太郎(cv.神谷明)、克也に積極的に迫る青秀高校陸上部の安田雪美(cv.坂本千夏)らを交えた複雑な恋愛ストーリーが魅力ある作品です
本作の見どころは、「巨人の星」や「ドカベン」などピッチャー(投手)や4番打者といった強打者を作品の主人公にするのが当時の野球作品の鉄則の中、1番・センターの俊足打者を主人公にしているところです
常に新境地を開拓するあだち充先生の野球作品は恋愛要素を重点的に描き、また野球作品とは思えないほどに爽やかで清々しいラストも魅力があります(島本和彦先生の漫画「アオイホノオ」でネタにされていたアレです)
そして克也を取り巻く複雑な恋愛ストーリーも魅力があり、甘酸っぱい青春模様が描かれています
私個人としては安田雪美ちゃんが大好きであり「あだち充ヒロイン」の中では間違えなく彼女がNo. 1です(坂本千夏さんの声が可愛ええこと!)
さらに個人的には『ナイン2』のサブタイトルである「恋人宣言」というのが〔これぞ!80年代だ!!〕という感じで愛おしいほど好きです
タッチ
「週刊少年サンデー」で1981年から1986年まで連載されていた言わずと知れたあだち充先生の代表的な野球漫画
1985年3月にTVアニメ化され1987年3月まで(全101話)放送、1986年にはTVアニメを元にした劇場版三部作が公開されるなど80年代アニメを語る上でも外せないアニメ作品です
また最近では、『タッチ』から約30年後の明青学園の描いた作品『MIX』が、現在ゲッサンにて連載中でありTVアニメ化もされています
あらすじーー
家がお隣同士の上杉家と浅倉家に3人の子どもが同じ年に生まれる。双子兄弟の兄・上杉達也(cv.三ツ矢雄二)と弟・上杉和也(cv.難波圭一)、そして浅倉南(cv.日髙のり子)は幼い頃から共に仲良く育ってきたが、ある時3人のうち一人が女ということに気づいた…
達也・和也・南の三角関係を描きながら甲子園を目指す
本作では、杉井ギサブローさんが総監督の務め、のちに『YAWARA!(1989)』の監督を務めるときたひろこさんがシリーズ監督をされています
また、ときたひろこさんは『陽あたり良好!』でもシリーズ監督を務めているのもポイントです
本作の見どころは、なんといってもその世界観
アニメ『タッチ』の世界観は80年代の日常シーンを的確に捉えており、レコード・映画館・喫茶店など本作を観ているだけで80年代を没入体験することができます
こういった80年代当時を感じれるシーンがあるアニメは、80年代当時を知らない20代の私としてめちゃくちゃ貴重な作品です
80年代の日常が溢れるアニメ『タッチ』は、平成生まれにとってもすごく勉強になります
陽あたり良好!
「週刊少女コミック」で1980年から1981年まで連載されていた漫画
1987年4月に『タッチ』の後番組としてアニメ化され全48話放送されました
1988年には劇場版作品『陽あたり良好! KA・SU・MI 夢の中に君がいた』が公開されます
【あだち充野球アニメ3部作】のラストを飾る作品です
あらすじーー
岸本かすみ(cv.森尾由美)は、進学先の明条高校に通う為に学校近くの叔母の家に居候することになる。
叔母との2人暮らしだと思い引っ越してきたかすみだったが、叔母の家は明条高校の男子生徒を抱える下宿先となっており、風呂場で下宿人・高杉勇作(cv.三ツ矢雄二)に裸姿を見られてしまう。
かすみと勇作…同い年の男女らが住む下宿「ひだまり」で奇妙な新生活が始まる。
『陽あたり良好!』の原作はそこまで野球要素の強い作品ではないのですが、アニメ『タッチ』のヒットもありアニメオリジナルとして野球要素が多く足されています
また『タッチ』からのレギュラー声優も多く続投されており、主人公・高杉勇作の声優も前作同様に三ツ矢雄二さんが演じられているのも大きな特徴です
そんな中、注目していただきたいのがヒロイン・岸本かすみを演じる森尾由美さんであります
森尾さんといえば、ドラマにも数多く出演されている方で、TVアニメでは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に秋本・カトリーヌ・麗子役で出演されており、アニメファンにはこちらのイメージの方が強いかもしれません
しかし、その麗子に匹敵するぐらい『陽あたり良好!』のかすみはハマり役であり、素晴らしい演技をされています
是非、森尾由美さんの演じるかすみちゃんにも注目してください!
本作の面白いところは、ヒロインのかすみちゃんには日本とアメリカ間で遠距離恋愛している歳上の彼氏・村木克彦(cv.井上和彦)がいる状態から物語がスタートするところです
その為序盤は、かすみちゃんと勇作の間に恋愛感覚はなく展開されていきますが、徐々に良い感じのムードになってきたタイミングで克彦さんが帰国…更には勇作に恋心を抱く関圭子(cv.鶴ひろみ)を加えて、あだち充先生お得意の恋の複雑ドラマがヒートアップしていきます
3作品の紹介が終わったところでここからが本題です
ここからは【あだち充野球アニメ3部作】の関連性を元に、真の魅力について語っていきます
作曲家本人が歌う、「真夏のランナー」の魔力
【80年代・あだち充野球アニメ3部作】で一番の魅力といえば、間違えなく音楽を担当されている芹澤廣明さんのサウンドであります
芹澤廣明さんといえば、80年代にに中森明菜の「少女A」やアイドル期のチェッカーズの楽曲など、数多くヒット曲を手掛けた作曲家です
アニメの楽曲も手掛けられており、『キン肉マン』のOP「キン肉マン GO Fight!」「ほのキン肉マン」や『機動戦士ガンダムZZ』の「アニメじゃない」「サイレントヴォイス」などがあります
そんな80年代を代表する作曲家の芹澤廣明さんが主題歌からBGMまでほぼ全ての音楽を担当され、岩崎良美さんが歌う「タッチ」「愛がひとりぼっち」など【あだち充野球アニメ3部作】は音楽を楽しむ作品であることを強く言いたいです
【あだち充野球アニメ3部作】が他のアニメ作品と決定的に違うのが、音楽を担当されている芹澤廣明さん自身がボーカルを務め歌われるアーティストということであります
もうねぇ、バンバン歌われています!!
例えば、『ナイン』で歌われる「私のYoung Boy」や『タッチ』で歌われる「星のシルエット(和也のテーマ)」「風のメッセージ(達也のテーマ)」など
挿入歌からOP主題歌まで自身で作曲した曲を歌いこなし、その楽曲こそが【あだち充ワールド】を作り上げていくのです
そして、【あだち充ワールド】を作り上げている代表曲が「真夏のランナー」であります
「真夏のランナー」は『ナイン』の主題歌として芹澤廣明さんが作曲し、ヒロイン・中尾百合役の倉田まり子さんが歌い本作を象徴する曲です
そして『ナイン 完結編』では、芹澤廣明さん自らがアーティストとなり、本曲を歌い上げて作品のラストを飾ることになります
【あだち充野球アニメ3部作】の代表作『タッチ』では、「永遠のランナー」という楽曲が最終回で流れます
こちらも芹澤廣明さんが作曲・歌を務めているわけですが、「真夏のランナー」を意識した歌詞とメロディで展開される楽曲なのです
同じ方が作詞されているからこそできる作り方であり、ここにも【あだち充ワールド】の繋がりを感じのでした
そして【あだち充野球アニメ3部作】の最終作『陽あたり良好!』でも本曲は違った形でサプライズが用意されています
それが「愛が眠る日まで-真夏のランナーⅡ-」です
まさかの「真夏のランナーⅡ」であります!
「真夏のランナー」のメロディと歌詞をアレンジして芹澤廣明さんが歌われた「愛が眠る日まで-真夏のランナーⅡ-」は、これがめちゃくちゃ良いタイミングで流れてくるのです
ドキッとさせられる尊いシーンから、馴染みのあるメロディーが流れる展開…間違えなくテンションが爆上がりします
もちろん視聴している側はそんなサプライズが仕掛けられているとも知らないわけであり、シチュエーション的にも完璧なタイミングで流れている「愛が眠る日まで-真夏のランナーⅡ-」は最高の一言です
「真夏のランナー」という楽曲で繋がれた【あだち充野球アニメ3部作】…芹澤廣明さんの音楽で作り上げた世界観を楽しんでください
アナログアニメ・最強の技、透過光
【あだち充野球アニメ3部作】で注目するべき点は、全ての作品で監督業をされている杉井ギサブローさんの存在です
『ナイン』『タッチ』『陽あたり良好!』で総監督を務められたのが杉井ギサブローさんであり、同じ方が総監督に座っていることで作品に繋がりができ、世界観を共有しやすくブレないというのは大きなメリットとなります
随所に見せる杉井ギサブロー演出も光り、その中で最も分かりやすいのが「透過光」と呼ばれる演出技法です
「透過光」は『あしたのジョー』『エースをねらえ!』などの監督で知られる出崎統監督が生み出したとされており、光を線や帯、円や点などで表現したアナログ(セル画)時代の演出技法であります
よく海のシーンで海面がキラキラして輝いているアレが透過光を使用したものです
そして【あだち充野球アニメ3部作】で多用されているのが、「透過光」を応用した「キャラクターの周りの背景を白抜きする」演出技法であります
これは杉井ギサブロー監督作品でよく使われており、白抜きした背景に透過光を当てることでキャラクターに注目が集まり、よりドラマチックに強調されたシーンとなるのです
この技法については、『タッチ』『陽あたり良好!』のOP映像を観ていただけると分かりやすいでしょう
ちなみにこの杉井ギサブロー作品で使われた技法は、『タッチ』『陽あたり良好!』とシリーズ監督を務めたときたひろこ監督にも継承され、自身の監督作品『YAWARA!』でも使われています
一つの演出の繋がりから作品を深掘りしていくのも、杉井ギサブローさんが総監督をされた【あだち充野球アニメ3部作】の楽しみ方です
「あだち劇団」と呼ばれた画期的な声優起用
【あだち充野球アニメ3部作】の繋がりをキャラクターを演じられた声優方面からも見ていきましょう
【あだち充野球アニメ3部作】では声優陣が固定されていることが多く、特に『タッチ』から『陽あたり良好!』の流れは、『タッチ』のレギュラー声優陣が(日髙のり子さんを除き)そのまま移行されてます
同じ劇団(あだち充作品)の役者でも、性格の異なる別の役を演じる方式がとられており、当時のアニメ雑誌でも「あだち劇団」と呼ばれていました
その中でも注目していただきたいのが、塩沢兼人さんが演じられたあだち充キャラクターです
塩沢さんは(『みゆき』を含む) 80年代あだち充アニメ作品全てに出演されております
またそのキャラクターの性格も様々で、物静かな左腕エースでありながら百合との間に恋の波乱を起こす『ナイン』の倉橋永二、明青高校を引っ張るひと学年上のキャプテンでありグータラな達也に野球の才能を見出す『タッチ』の黒木武、キザでプレボーイな一面と好きな子には猫のように甘える一面を持つナルシストな『陽あたり良好!』の美樹本伸…それぞれに違った魅力を持つキャラクターを演じられています
また声優の北村弘一さんは『ナイン』『タッチ』『陽あたり良好!』に全て監督役で出演されており、まさに同じ役者(キャラクター)が色んな劇(作品)に参加されている錯覚を感じます
そういったあだち充作品に参加されている声優陣にも注目してみてください!
(ちなみに塩沢兼人さん演じるあだち充キャラだと、私は断然『みゆき』の村木好夫が好きです!)
【あだち充野球アニメ3部作】は、時代を写す鏡
80年代の高校野球といえば、1983年にPL学園の桑田・清原のK・Kコンビが、甲子園に旋風を巻き起こした時代です
それと同じように、80年代のアニメ界に旋風を巻き起こしたと言っていいほどの功績を残したのが【あだち充野球アニメ3部作】だと勝手に思っております
そういう意味でも【あだち充野球アニメ3部作】 は、80年代アニメを語る上でも重要な3作品なのです
【あだち充野球アニメ3部作】は、80年代の青春の全てが詰まった作品たちであり、時代を写す鏡のような立ち位置にあると感じます
その世界観を支えているのが杉井ギサブローさんの演出であったり、芹澤廣明さんの音楽であったり、声優陣の演技というワケです
激動の80年代アニメ界を駆け抜けたグループ・タック制作の【あだち充野球アニメ3部作】を観ていただければと思います
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